特別なできごと特別なできごと

特別なできごと Vol.4 特別なできごと Vol.4

善兵衛2014、それぞれの想いをのせて

善兵衛2014、それぞれの想いをのせて

グレートヴィンテージにふさわしいぶどうが収穫できた2014年。その年のマスカット・ベーリーAとブラック・クイーンを厳選して収穫、丁寧に醸造、熟成を重ねました。そうして生み出された岩の原ワインの最高峰「善兵衛2014」をお楽しみいただくために、お伝えしたいことがあります。

最良の1本を、最高に楽しむために。

最良の1本を、最高に楽しむために。

ワインサロン「エルミタージュ」
オーナーソムリエ 佐々木政光 氏

岩の原葡萄園さんとの出会いは20年以上前、私がソムリエになる以前からのお付き合いです。上越市(新潟県)でワインサロンを営んでいることもあり、岩の原葡萄園さんのワインもずいぶん取り扱っていますが、「善兵衛」シリーズのワインは通常のラインナップで一番上位の「ヘリテイジ」よりもさらに凝縮感があり、ボディ自体もポテンシャルの高いワインかなと思っています。5年、10年とねかせる間にもっと美味しくなるという可能性を秘めたワインですが、すぐに飲む場合はデキャンタに移してからお召し上がりになることをおすすめ します。

佐々木政光 氏
佐々木政光 氏 佐々木政光 氏

ワインサロン「エルミタージュ」のオーナーシニアソムリエ。現在、社団法人日本ソムリエ協会の執行役員、新潟支部長を務める。

善兵衛2014とは

善兵衛2014とは

外観は紫がかったやや濃い目のガーネット。香りは、主要ぶどう品種となるマスカット・ベーリーAの凝縮感のある果実の香りを中心に、樽からくるバニラやシナモン、丁子(クローブ)の香りが調和をなし、わずかに焦がしたキャラメルや茹でた根菜の香りも感じられます。口に含むと、全体的にボリューム感がありますが、丸みを帯びたキメの細かいタンニンが広がり、後半にくるやわらかい酸が全体の味わいのバランスを引き締め、アフターにやや甘みも感じられます。前回の「善兵衛2009」は酸がしっかりときれいに出ていたのが特徴でしたが、「善兵衛2014」はもう少しやわらかく、よりキメが細かくなっているように感じます。

マリアージュの楽しみ方

マリアージュの楽しみ方

一般的にいわれるマスカット・ベーリーAは果実味が強く、シンプルにベーリーA=イチゴの香りという図式で説明されることもありますが、岩の原葡萄園さんでつくられるベーリーAは他の産地のものより骨格がしっ かりしていて、落ち着いているというか、ふかした芋や土の香りが感じられます。それがベースとなった「善兵衛2014」には素材自体に脂質の旨みがしっかりとある、甘めの味付けの料理がおすすめです。「鰻のかば焼き」(写真左)や「鴨肉のロースト フルーツソース」(写真下中央)、「サトイモのそぼろあんかけ」などにも合います。上質なタンニンが鰻や鴨肉の風味と調和し、根菜類と合わせればそのうまみをうまく引き出し、素材の味を引きたててくれるワインなのです。

チーズでは、リッチでクリーミーな白カビタイプのものが適しています。ブリア・サバランという、製造過程で生クリームを加える非常にコクがあり、チーズケーキのような味わいのチーズがありますが、私はこれと合わせたときに一番心地よさを感じました。

「鰻のかば焼き」(写真左)や「鴨肉のロースト フルーツソース」(写真下中央)
料理
チューリップ型のグラス

また、「善兵衛2014」をお飲みいただくときは、十分に香りを楽しんでいただけるやや大振りのチューリップ型のグラスがお勧めです。通常赤ワインをサーブする際は18度以下を目安としていますが、「善兵衛2014」は16度くらいが適温だと思います。

ワインの格から考えると、記念日や、やはり特別な日に開けたいワインですね。

「善兵衛」を造る、ということ。

「善兵衛」を造る、ということ。

岩の原葡萄園 栽培技師長 建入一夫 氏

これまで5回、すべての「善兵衛」の製造に関わってきました。いま日本ワインというものの技術が日進月歩で進化し、ぶどうの栽培に関しても、感覚的だったものがどんどんロジカルになってきています。味や香りに対する評価基準も明確になってきています。そうした中で今回、2014年のぶどうで「『善兵衛』をつくろう」という気持ちに社員全員がなり、間違いなく史上最高に洗練されたものが出来たと思っています。

ワインの価値は、お客さまが決める

ワインの価値は、お客さまが決める

私たちとしては、毎年「善兵衛」が造れるように、という気持ちで作業していますが、つねに「善兵衛」が造れる訳ではありません。科学的な裏付けや、糖や酸のデータというものは、ワイン造りの中の点でしかなく、ワインの価値は機械では計れないのです。栽培、収穫、醸造、熟成とそのすべてのプロセスで、人の手と自然がともに作り上げるものなのです。

しかしその本当の価値は、お客さまに飲んでいただく瞬間まで分かりません。私が美味しいと感じるのはもちろんですが、それだけでは十分ではありません。造り手が強く個性を表現することも大切ですが、お客さまの求める「善兵衛らしさ」、「岩の原らしさ」も極めていく。これが大切なことだと思っています。

樽の上に置かれた善兵衛2014 樽の上に置かれた善兵衛2014
雪が積もった葡萄園

ものづくりに携われる、よろこび

ものづくりに携われる、よろこび

最近、「うまくいかないことがものづくりだ」という言葉を耳にしました。本当にその通りだと思います。40年近く岩の原葡萄園でワイン造りに関わっていますが、「これで満足」ということは未だにありません。また、創業者の川上善兵衛がマスカット・ベーリーAに託した想いというものを、品種誕生90年を迎えた今、そのすべてを理解しているわけではありません。それほどに深い哲学、長い伝統の中に身を置ける仕事に携われることは、自分にとってとても幸せなことだと思っています。

雪が積もった葡萄園
バックナンバー
バックナンバー


> Vol.10 岩の原の毎日がつくり出す、岩の原の未来。

> Vol.9 そこに、岩の原葡萄園らしさはあるか

> Vol.8 善兵衛さんと、わたし

> Vol.7 ワインのために、グラスメーカーができること

> Vol.6 作陶45年。私の戦いと、岩の原葡萄園のこれから

> Vol.5 次の世代に、いま伝えておきたいこと

> Vol.4 善兵衛2014、それぞれの想いをのせて

> Vol.3 日本ワインの進化と真価(後編)

> Vol.2 日本ワインの進化と真価(前編)

> Vol.1 雪国のワインと、岩の原葡萄園に魅せられて